介護保険制度を利用すれば、さまざまな介護サービスが受けられます。しかし、制度の仕組みについて詳しく知らない方もいるでしょう。そこで、介護保険制度の仕組みやサービス内容について簡単に解説。認定調査の申請の流れと期間についても説明します。
高齢者の介護が必要だと感じた時、「介護保険制度を利用しよう!」と考える方も多いはずです。
しかし、その仕組みや申請方法・サービス内容について、知らない方もいらっしゃるでしょう
そこで、介護保険制度の仕組みやサービスの内容・要介護度などについて解説します。
制度を利用するための申請の流れについても簡単に説明しているため、これから認定調査を申請しようと考えている方は参考になるでしょう。
また、介護保険法は直近では2021年に改正されました。
改正時のポイントについてもご紹介し、これまでと比べて何が変わったかについても簡単に説明します。
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介護保険法とは1997年に成立し、2000年に施行された法律です。
3年に1度改正が入り、直近では2021年に改正されました。
介護保険制度も2000年より開始され、市区町村が運営しています。
介護保険制度の対象者は40歳以上です。
40歳になると被保険者として介護保険に加入し、65歳以上になると要介護認定で介護が必要だと認定されれば、サービスを受けられます。
また、65歳以上にならなければ、介護保険を利用したサービスが受けられないわけではありません。
40歳から64歳の方は、初老期の認知症や脳血管疾患などの特定疾病が介護保険の対象となります。
日本人の平均寿命が長いことはご存じかと思いますが、いつから長くなったかはご存知でしょうか?
以下は、内閣府が発表した令和3年版高齢社会白書に掲載されていたグラフです。
1950年の平均寿命は男性が58.0歳、女性が61.5歳でしたが、1970年には男性が69.31歳、女性が74.66歳と10歳以上も伸びていることがわかります。
その後も平均寿命は徐々に長くなっており、2065年には男性が84.95歳、女性が91.35歳になるとの予測も出ているほどです。
介護保険制度が導入された背景はこのような高齢化の進展のほか、要介護高齢者の増加や介護保険の長期化などにより、介護ニーズが増大したことも理由の1つです。
また、核家族化の進行で同居家族による介護ができなかったり、介護をする家族が高齢化する「老々介護」の問題も出てきたりしました。
こうなると従来の老人福祉・老人医療制度による対応では限界があると考え、高齢者の介護を社会全体で支え合う「介護保険」が創設されたということです。
介護保険を利用して受けられるサービスの種類は、大きく分けて以下の3つがあります。
それぞれどのようなサービスが受けられるのでしょうか?
その内容について解説します。
自宅に住みながら受けられるのは、「居宅サービス」です。
居宅サービスの中には、「訪問サービス」「通所サービス」「短期入所サービス」があります。
訪問サービスは、訪問介護や訪問入浴介護・訪問看護などがあり、自宅に居ながら介護を受けられます。
例えば訪問介護で受けられるサービスは、入浴・食事・排泄などの身体介護や、掃除・洗濯・調理などの生活援助、通院のための乗車・降車の介助などです。
次に、通所サービスについて説明します。
通所サービスには、通所介護(デイサービス)と通所リハビリテーション(デイケア)があります。
日中施設に通うことで食事の介護や入浴など、日常生活上の支援が受けられることが特徴です。
訪問サービスとの違いは、自らが訪問してサービスを受けるという点でしょう。
最後に、短期入所サービスについてご紹介します。
短期入所生活介護と短期入所療養介護は「ショートステイ」と呼ばれており、短期間の入所があるサービスです。
訪問サービスや通所サービスとは異なり、短期間自宅から離れることが大きな特徴でしょう。
介護者の介護の負担を軽減したり、病気になったりしたときなどにも利用できます。
サービス | 特徴 | 内容 |
訪問サービス | 自宅に居ながら介護サービスを受けられる | ・入浴・食事・排泄などの身体介護
・掃除・洗濯・調理などの生活援助 ・通院のための乗車・降車の介助など ・理学療法士や作業療法士・言語聴覚士による訪問リハビリテーション ・医師や歯科医師・薬剤師・歯科衛生士・管理栄養士による居宅療養管理指導 |
通所サービス | 自宅から通って介護サービスを受ける | ・食事の介護や入浴などの日常生活上の支援 |
短期入所サービス | 短期間の入所で介護サービスを受ける | ・食事介助やレクリエーションなど |
認知症によるBPSDでお困りの方も、こうしたサービスを利用することがおすすめです。
BPSDについて詳しく知りたい方は、こちらの記事「BPSDや中核症状とは?介護者のための症状別対応策も紹介」をご覧ください。
施設サービスは、「特別養護老人ホーム(特養)」「介護老人保健施設(老健)」「介護療医療院」で受けられるサービスです。
施設によって負担額が異なるほか、利用対象者・設備の指定基準・人員基準も違います。
では、どのような人がどの施設を利用できるのでしょうか?
常時介護が必要で、在宅生活が困難な要介護度3以上の人は、特別養護老人ホームを利用できます。
介護老人保健施設は病状安定期で入院治療の必要がなく、リハビリを重点的に行い、在宅復帰を目指す要介護者が対象です。
介護医療院の対象者は、カテーテルを装着しているなど、常時医療管理が必要で病状が安定気にある要介護者となります。
簡単に説明すると、リハビリが必要な方が在宅復帰を目指すために一時的に利用するのが介護老人保健施設、自宅での介護が困難な「要介護度3以上」の方は特別養護老人ホーム、常時医療管理が必要な方は介護医療院の利用が可能です。
また、これまでの「居宅サービス」や「施設サービス」と異なり、それぞれの地域の特性に応じて市町村が提供するサービスの種類・量を決めることができるのが、「地域密着型サービス」です。「小規模多機能居宅介護」「定期巡回・随時対応型訪問介護・看護」や「認知症対応型共同生活介護(グループホーム)」などのサービスがあります。
地域によって整備の状況が異なるなどの課題もありますが、住み慣れた地域での生活を支えるために注目されているサービスです。
介護保険法は3年に1度改正が行われ、直近では2021年4月に改正されました。
今回の改正のポイントは、以下の5点です。
参考:厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/content/000640392.pdf
では、改正されたポイントを詳しく見ていきましょう。
介護保険サービスを利用する上で特に影響が大きいのが、「地域包括ケアシステムの推進」と「福祉用具の上限設定」です。
地域包括ケアシステムとは、高齢者の尊厳を守り自分らしい生活ができるよう地域で支援し、サービスを提供する体制のことです。
どのような人生を送るのか、本人の意思を尊重するために生まれたシステムといえるでしょう。
一方、福祉用具のレンタルは事業者によって価格に差がありましたが、平均価格の公表と上限が設定されました。
利用者は平均価格を把握できるため、適切な価格で利用できることが大きなポイントです。
なお、新商品は3カ月に1度全、国平均貸与価格の公表と上限価格を設けることが決定しています。
また、介護報酬や高額介護サービス費支給制度の上限も見直されました。
高額介護サービス費支給制度とは、介護サービスを利用する際の金額の上限を上回った分が払い戻される仕組みのことです。
これまでは自己負担額の上限が一律44,400円でしたが、世帯の年収によって増加します。
例えば年収約383万円から770万円未満の場合、上限はこれまでと同様に44,400円ですが、年収が770万円以上になると93,000円、年収1,160万円以上になれば140,100円となります。
世帯の年収によって自己負担額が変わるのは、社会保障制度をより持続可能な制度にすることが目的です。
少子高齢化と平均寿命の変化などを考慮し、これからも介護サービスを提供するための改正だといえます。
介護保険を利用するために、介護保険への加入と要介護認定・支給開始の時期や、条件について知りたい方もいらっしゃるのではないでしょうか。
介護保険への加入は40歳以上になりますが、介護保険サービスを利用するためには、まず要介護度認定をするために自治体へ調査依頼を出さなければいけません。
お住まいの市区町村の介護保険担当窓口から申請しましょう。
日程調整をして認定調査員による認定調査が行われると、その後認定結果が出ます。
結果が出るまでは1カ月程度とも言われていますが、2カ月程度かかることもあります。
「すぐに結果が出るわけではない」ということを知っておきましょう。
認定結果で介護認定が出たらケアマネージャーを探し、ケアプランを決定して介護サービスが開始されます。
受給要件などについては、「介護保険とは?」でも解説しているため、こちらも参考にしてください。
認定結果が出るまでに時間がかかり、「限界に達するかもしれない」とお悩みの方のためはこちらの記事「【限界に達する前に】介護のストレスを減らす5つの工夫を紹介」を参考にされてはいかがでしょうか。
要介護度が認定されても介護のストレスがなくなるわけではないため、こうした解消方法を知り負担を減らしてみませんか。
「要介護」という言葉が何度か出てきましたが、どのようなものなのかよくわからないかたもいらっしゃるでしょう。
そこで、以下の表にそれぞれについて簡単にまとめました。
これから要介護の認定調査を申請して介護サービスを受けるか検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
要支援 | 1 | 要介護状態とは認められないが社会的支援の必要とする状態 |
2 | 生活の一部について部分的に介護を必要とする状態 | |
要介護 | 1 | |
2 | 軽度の介護を必要とする状態 | |
3 | 中等度の介護を必要とする状態 | |
4 | 重度の介護を必要とする状態 | |
5 | 最重度の介護を必要とする状態 |
参考:公益財団法人生命保険文化センター
介護保険を利用した介護サービスを受けるには、利用上限金額の把握も必要です。
これは月ごとに利用上限金額が決まっているため、介護度に応じて適切なサービスを選定することも必要でしょう。
利用上限金額については、以下の表のとおりです。
要介護度 | 利用上限金額 | 自己負担分(1割) | 自己負担分(2割) | 自己負担分(3割) |
要支援1 | 50,320円 | 5,032円 | 10,064円 | 15,096円 |
要支援2 | 105,310円 | 10,531円 | 21,062円 | 31,593円 |
要介護1 | 167,650円 | 16,765円 | 33,530円 | 50,295円 |
要介護2 | 197,050円 | 19,705円 | 39,410円 | 59,115円 |
要介護3 | 270,480円 | 27,048円 | 54,096円 | 81,144円 |
要介護4 | 309,380円 | 30,938円 | 61,876円 | 92,814円 |
要介護5 | 362,170円 | 36,217円 | 72,434円 | 108,651円 |
介護保険制度についてご紹介しました。
制度が設立された背景のほかに介護サービスの内容や、2021年の改正のポイント・要介護度別の利用上限金額なども解説しているため、参考になったのではないでしょうか。
これから要介護度認定の調査依頼を申請しようとしている方は、「どのようなサービスが受けられるのだろう」「金銭の負担はどれくらいあるのだろう」と心配なことが多いと思います。
また、「いつから利用できるの?」と不安な方もいるでしょう。
そのような方は、まず申請の流れを確認しておきましょう。
調査結果が届くまでは期間があるため、その間は近隣の施設の情報について調べるとよいかもしれません。
同じような施設でも利用条件が異なる場合があるため、事前に調べておき、要介護度が認定されてからすぐに介護サービスが受けられるよう準備しておくことをおすすめします。
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